ベトナムは、コロナ禍直前までは、大きな急成長を遂げ、コロナ禍である2020年は「コロナにおける優等生(コロナ封じ込め成功)」として、ベトナムのコロナ政策が世界でも高く評価されていました。しかし、2021年の第4波のパンデミックによる厳しい社会隔離により、大きな経済的打撃を受けています。
厳しい社会隔離を緩和した今は、従来の「コロナゼロ」政策から、ワクチン接種率を上げることで重症化、死亡率を最小限に抑えることでコロナと経済活動を両立する「Withコロナ」を前提とした「ニューノーマル政策」にシフトしています。
本記事では、ベトナムとダナン市のコロナ前~現在に至るまでの変化、今後の考察をまとめました。
コロナ前のベトナム経済を振り返る
2019年までのベトナムのGDP成長率は、近年、毎年6%後半~7%台を維持、一人当たりのGDPは3000ドル突破間近であり、安定的な成長を遂げていました。また、現在9,762万人であるベトナムの人口は、2029年には1億人を突破すると予想されており(国家統計局(GSO:General Statistics Office of Vietnam)と国連人口基金(UNFPA)が共同で実施した調査による)、中間層の更なる拡大により海外からも消費市場としても有望な国として見込まれています。
*2019年までのベトナムの経済状況は、こちらの記事もご参照ください。
コロナ禍における「優等生」(2020年)
2020年、世界各国で猛威を振る新型コロナウィルスにより、多くの国のGDP成長率が落ち込んだ中で、ベトナムは全国規模で「社会隔離措置」という、一日の感染者数が10人程度でも、厳しいロックダウンを行うことで、新型コロナウィルスの封じ込めに成功。「新型コロナウィルス封じ込めに成功した優等生」として、2020年のGDP成長率は東南アジアで唯一のプラス成長である+2.9%となりました。
そのため、アメリカの政治誌『ポリティコ』が行なった「新型コロナウイルス対策を最も効果的に行なっている国ランキング」によると、ベトナムは調査対象の30カ国・地域中でいちばん高い評価を受けていました。
第4波による広範囲でのパンデミック
2021年第一四半期のGDP成長率は4.48%、第二四半期は6.61%と、経済成長の回復を見せていたところ第4波が発生。
北部ハイズオン省の集団感染から始まり、ホーチミンでの変異種クラスターからパンデミックに拡大しました。
2021年5月の段階でベトナムワクチンの接種率は0.1%と低い数字ということもあり、感染は瞬く間に拡大、一日数千人の感染者数となりました。
ダナン、ホーチミンでは今までで一番厳格な社会隔離措置(指定業種以外は、家から離れず、外出をしてはならない通達)を実施。GDP成長率は-6.17%となり、およそ21年ぶりのマイナス成長となりました。この厳しい社会隔離措置の影響で、地域ごとに従業員の通勤が制限されるなど、生産現場に大きな影響が出ました。
ワクチン接種速度
世界で第5位
2021年の5月のワクチン接種率はたったの0.1%でしたが、ホーチミンを始めワクチン接種を急速に拡大。10月の段階では一回目の接種者だけでも40%近くまで上昇し、ダナン、ホーチミンに関しては95%以上の人口が一回目のワクチン接種を完了し、同時に感染者数、死亡者数も大きく減少しています。
「Withコロナ」を前提としたニューノーマル政策
ワクチン接種率上昇を受け、今まで推進してきた「ゼロコロナ」から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と安全かつ柔軟に共存していくための臨時措置(政府決議第128号/NQ-CP)を10月1日から施行を開始しました。
新規感染や重症化、死亡率を最小限に抑え、新型コロナ対策と社会経済活動を両立し、2021年末までに全国的にニューノーマル(新常態)に移行することを目指しています。
2021年も
依然プラスの成長
第4波が発生する前の2021年第一四半期予想からは大幅な下方修正となりましたが、2021年のベトナムのGDP成長率予想は依然プラス成長となっています。
世界銀行は、ホーチミン市やハノイ市などが社会隔離措置による制限を段階的に緩和していくことにより、10~12月に経済は回復に向かう予想としているものの、経済回復に向けてワクチン接種を継続するほか、需要をサポートするために当局が経常支出と開発投資支出の手続きを軽減し、労働者や世帯、企業向けの補助を強化することが必要としています。
一方で、アジア開発銀行、IMFは中長期的にみてベトナム経済を楽観視しており、IMFは、東南アジア諸国連合(ASEAN)のマレーシア、タイ、フィリピン、インドネシアの4か国を上回るとの見通しです。
ダナンの規制大幅緩和
(政府決議第128号/NQ-CP)
ダナンは2021年10月18日現在まで、コロナ市中感染者数ゼロが続いており、10月16日0時より、レストランや飲食店に対し店内飲食が可能となりました。(ただし、通常の店員の50%までの稼働とする)
また、ジム、ヨガ、ビリヤード、屋内スポーツ、美術館、展示会、映画館、劇場、娯楽施設などのサービス・活動も、新型コロナ対策を徹底した上で再開することが可能となっています。
理美容店以外の美容サービス、カラオケ、マッサージ、バー、ディスコ、カジノ、インターネットカフェ、ゲームセンターなどの営業は引き続き一時停止となりますが、ダナン市の活動が少しずつ再開していくのが分かります。
ダナン
外国人観光客
受け入れ再開準備
DA NANG EXPRESS、DANANG TODAYの記事によると、現在ダナン市は、以下の3つのフェーズに分けて、段階的に国内外の観光客を受け入れる準備を進めています。
DA NANG TODAYの記事では、ダナン観光省長のTruong Thi Hong Hanh氏によると、韓国の旅行会社は、ダナン市観光局と交渉を続けており、政府がこのプランを承認した場合、1週間に2つのツアーで200人の観光客を訪問させる案を提案している。ロシアについても旅行会社から連絡が来ており、1ヶ月に2000~4000人のロシアからの観光客をダナンへ送り出すことが可能だと伝えてきている。
ベトナム ダナン経済
今後の考察
2021年第3四半期は、製造業を始めとした多くの業種が、今までで最も厳しい社会隔離措置による活動の停止を余儀なくされ、マイナス成長となったものの、その間のワクチン接種が急速に進み、感染者数、死亡者数ともに減少傾向となり、2021年10月1日より新型コロナウィルスの規制が大幅に緩和され始めていることから、世界銀行、アジア開発銀行、IMFなどが今後2021年第4四半期以降はベトナム経済が回復する見込みと予想しています。
また、世界銀行はまた、世界経済の回復により、アメリカ、欧州連合、中国へのベトナムの輸出が確保されるであろうと予想しています。
ダナンに関しては、ベトナムの経済回復とともに、ダナン市政府が、外国人観光客受け入れ準備を進めており、現在、受け入れ再開に向けてのプランに関し、首相の承認待ちです。このプランの承認が下りれば、国内観光客、韓国、ロシアを中心とした外国人観光客の受け入れが開始され、ダナンの観光産業も徐々に回復が見込めるでしょう。
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